第35回研究会プログラム

第35回研究会

第35回研究会開催要領

人工知能学会合同研究会2025の一環として開催されます.

  • 日時 2025年12月2日(火)9:20-17:10
  • 場所 慶應大学 日吉キャンパス (〒223-8521 神奈川県横浜市港北区日吉4-1-1)・オンラインからも参加可能
  • 参加費 無料(合同研究会(1, 2, 3日開催)も参加無料です)(注)事前の参加登録が必要です
    • こちらよりお申し込みください.
    • 参加申込〆切は11月24日(月)です.
  • 予稿 研究会発表の予稿は,開催日前に本HPにて公開します.
  • プログラム 第35回研究会プログラム
  • 午前と午後のセッションと,研究会招待講演,は開催場所が異なりますのでご注意ください!

場所:協生館 多目的教室3(E会場)

9:20-9:40(ショート)

LLMを用いた推薦リスト生成のための,ペアワイズ比較・集約手法についての予備的検討

  • ○谷知拓,柴田祐樹,高間康史(東京都立大学)

 本発表では,LLMを用いたゼロショット・スケーラブルな推薦リスト生成手段として,ペアワイズ比較を集約するアプローチに着目し,予備実験を行った結果について報告する.候補アイテム数が多数存在し,全アイテムを一括してLLMに評価させることが困難な場合には,複数回に分けてプロンプトを与え,その結果を集約する方法が考えられる.本発表ではアイテムペア単位でLLMに選好関係を評価させ,BTL (Bradley-Terry-Luce) 集約により推薦リストを生成するアプローチについて予備実験を行った結果を示し,ペア数およびLLM入力バッチサイズが推薦の一貫性と精度に与える影響について考察する.

9:40-10:00(ショート)

大規模言語モデルによるユーザー嗜好の多面的理解に基づくDirect Preference Optimizationの推薦最適化への拡張

  • ○冨田優,金刺宏樹,鈴村豊太郎(東京大学)

 Direct Preference Optimization(DPO)は、二値の選好データでシステムの出力を直接最適化する手法である。一方で、従来の手法では二者比較に依存するため、推薦タスクにおけるアイテムの順序づけが困難であった。本研究では、LLMを用いてユーザレビューからアイテム属性に対する嗜好の重要度を学習し、それに基づくランキングを作成してDPOの枠組みに統合することで、ユーザーの複雑な嗜好を考慮したアイテム全体の順序を直接学習することを可能にする。

10:00-10:20(ショート)

自動車灯火装置における故障推論のための構造と故障の概念精緻化の検討

  • ○島村佳周,神田脩太朗,笹嶋宗彦(兵庫県立大学)

 自動車設計において,起こり得る故障を網羅的に推論することは難しい.本研究では,その作業の支援を目的とした故障推論について研究している.本論文では,先行研究の知識モデルにおいて,構造として定義すべき内容が部品名に含められていたことが故障推論の障害になっていたという課題に対し,知識モデル構造の修正とその動作確認を行った.また,経年劣化のような故障原因を扱えなかったという課題に対して,故障概念の精緻化を行った.

10:20-10:40(ショート)

作業マニュアル作成初心者のための機能分解木構築方法論の検討

  • ○堺貴彦,笹嶋宗彦(兵庫県立大学)

 「機能分解木」は,作業マニュアルを,ノウハウも含めて構造的に記述できる有用な手法である一方,初心者には記述が難しい.本研究では,初心者が作成した機能分解木を分析し,つまずきや誤りの傾向を明らかにした.その結果を基に「機能分解木構築ガイドライン」を考案し,評価実験を実施した.実験結果から,「作業の粒度」が適切なマニュアルを作る事が,初心者にとっては難しいことが判明した.また,ガイドラインが初学者に与える影響について評価実験を行い,効果があることを確かめた.

10:40-11:10

メタデータおよびユーザ行動に基づくマルチビュー融合によるデータセット間類似度の学習手法

  • ○程昊陽,早矢仕晃章(東京大学)

 本研究は,異種データセット間の類似性をメタデータのみから推定するための,マルチビュー(Multi-view)に基づく類似度学習手法を提案する.メタデータをTagとTextのビューと補助的なBehaviorビューに分割する.Tag/Textビューでは,データセットとタグ・単語からなる二部グラフ上でランダムウォークによって得られた系列を文として扱い,SGNS方法によって類似度を学習する.BehaviorビューはItem2Vecでモデル化し,類似度を推定する.結果,類似度ネットワーク融合(SNF)で統合類似度行列を構築する.MetaKaggleデータセットで実験して,ベースラインを上回る性能を示した.

 会場移動

 場所:協生館 藤原記念ホール(B会場)

11:30 - 12:20 招待講演

マルチメディアコンテンツにおける印象の推定と操作

  • ○新田直子(関西大学)

 昼休み・合同研究会企画

 場所:協生館 多目的教室3(E会場)

14:10-14:30(ショート)

高等学校情報科「情報Ⅰ」における各教科書の特徴の可視化

  • ○菊谷和也,笹嶋宗彦(兵庫県立大学)

 2025年度から大学入試共通テストに「情報」が新設されたが,出題水準や学習内容の重点範囲は明確に定められていない.本研究では,高等学校情報科「情報Ⅰ」の異なる教科書を対象に,各教科書間で内容の水準について,共通する部分と異なる部分を分析する.情報処理学会が公開している,「情報I」の教科書に出現する語彙とその頻度のリストと,各教科書の重要語とを照らし合わせた結果,プログラミング教育の水準が他の教科書に比べて高い,など,各教科書の特徴が明らかになった.

14:30-14:50(ショート)

LLMによる要約・詳細化過程におけるハルシネーションの分析

  • ○山田夏稀,安尾萌(立命館大学),松下光範(関西大学),Shan Junjie,西原陽子(立命館大学)

 本研究の目的は,大規模言語モデル(LLM)が要約と詳細化を繰り返す過程で情報がどのように変化し,ハルシネーションが生じるかを明らかにすることである.ニュース記事を用い,LLMによる要約・詳細化を複数回繰り返し,出力結果をハルシネーションのタイプ別分類,原文と各回の出力結果を比較した類似度,原文および出力結果の修辞構造の観点から分析した.結果,要約・詳細化の繰り返しに伴い類似度が低下し,記事の趣旨を示す文は維持される一方で,具体的な数値や根拠情報が失われるなど,既存研究で報告されている人のうわさの伝播行為と同様の変化が確認された.

14:50-15:10(ショート)

PPDACサイクルオントロジーに基づく「総合的な探究の時間」の指導計画作成補助システムの試作

  • ○堀之内逸人(兵庫県立大学),林宏樹(雲雀丘学園中学校・高等学校),笹嶋宗彦(兵庫県立大学)

 総合的な探究の時間(以下,「探究学習」)の指導には,課題の一つとして,探究学習の指導経験の浅い教員が指導計画を作成する難しさがある.本研究では,探究学習の指導モデルであるPPDACサイクルオントロジーを参照し,指導経験の浅い教員が探究学習の指導計画を作成することを補助するシステムを試作した.本システムは,授業総時間と学習内容,探究テーマを入力すると,指導計画案と生成AIが作成した学習内容の事例を出力する,指導計画作成補助システムである.

15:10-15:40

対話グラフの話題遷移に基づく対話パターン分析

  • ○野本匠馬,赤石美奈(法政大学)

 本研究は、対話中の話題遷移の構造を把握するため、対話内の単語の意味的密集度に基づいて、対話パターンを分析する手法を提案する。発話された単語間の意味的な距離を指標として、対話の流れをいくつかの基本パターンに分類する。基本パターンの組み合わせにより、実際の対話の話題の収束、発散、追従、減退、膠着、停滞などの状態を判別できるか検証し、対話の整合性について考察する。

 休憩

15:50-16:10(ショート)

多角的視点を持つマルチエージェントシステムによる要件定義レビュー

  • ○井上祐寛,松永嵩,綾塚祐二((株)クレスコ)

 要件定義の品質向上に向け,LLMを用いた「多角的視点」によるレビュー手法を提案する.プロジェクトマネージャ(PM),ビジネスアナリスト,システムアーキテクトなどの役割に応じた異なる視点を持つ複数のエージェントを並列適用することで,見落とし抑制や相互照合による誤検出・矛盾低減を試みる.本稿ではそこへ向けた第一歩として,PM役割の単一エージェントが動作する実験環境を構築し,レビュー手順と評価の枠組みを整備したことを報告する.

16:10-16:40

複数領域に対するキャプション生成を用いた目の不自由なユーザ向けの画像理解支援

  • ○Xu Yiling,Shan Junjie,安尾萌,西原陽子(立命館大学)

 本研究は,目の不自由なユーザが複雑な画像を深く理解するための支援システムを提案する.従来の単一の総括的キャプション生成では,複雑な画像における各部分への理解が困難な場合がある.そこで本研究では,入力画像を複数の領域に分割し,領域ごとにキャプションを生成する手法を提案する.「部分領域記述法」と「重ね領域最大法」の二つの手法を実装し,評価実験を行った.評価実験の結果,後者は複雑な構図を持つ画像において,10カテゴリ中8つで高いスコアを獲得し,主観評価でも優位性が示された.一方で,単一被写体の画像では包括的記述が有効な場合もあり,最適な手法が内容に依存することが示された.

16:40-17:10

画像生成AIを用いた読者を誘引する書籍表紙画像の生成

  • ○池田諒真,Shan Junjie,安尾萌,西原陽子(立命館大学)

 書籍の表紙は,読者に与える第一印象を形成する.既存研究では,書籍表紙のデザインは読者の興味や選択に影響を与えることが明らかになった.しかし,表紙画像に書籍のタイトルやカテゴリがどのように反映されれば,読者が誘引されるかはまだ不明である.本研究では,テキストから画像を生成するAIモデルを活用し,書籍の概要記述から表紙画像を生成するシステムを構築した.このシステムを用い,カテゴリ別の書籍に対して,異なるプロンプト構成によって生成された表紙画像が読者を誘引するかについて主観実験を行い評価した.実験の結果,書籍の概要文にある名詞を全て画像生成AIのプロンプトとした表紙画像が最も読者を誘引した.